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雨あがる
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ヴェネチア国際映画祭

●撮影日誌
 1999年5月

 1999年6月
 6月1日
 6月2日
 6月3日
 6月4日
 6月5日
 6月6日
 6月7日
 6月8日
 6月9日
 6月10日
 6月11日
 6月12日
 6月13日
 6月14日
 6月15日
 6月16日
 6月17日
 6月18日
 6月19日
 6月20日
 6月21日
 6月22日
 6月23日
 6月24日
 6月25日
 6月27日
 6月28日
 6月29日

作品概要
 概要
 黒澤監督の覚書より

キャスト
 寺尾  聰
 宮崎 美子
 三船 史郎
 檀  ふみ
 井川比佐志
 吉岡 秀隆
 加藤 隆之
 原田美枝子
 松村 達雄
 仲代 達矢

《七人の侍》たち
  〜スタッフ〜
 ☆監督:小泉堯史
 ☆脚本:黒澤 明
 ☆撮影:上田正治
 ☆撮影協力:斎藤孝雄
 ☆美術:村木与四郎
 ☆照明:佐野武治
 ☆録音:紅谷愃一
 ☆衣装:黒澤和子
 ☆監督補:野上照代

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撮影/制作日誌
1999年6月


黒澤明監督の遺志を継いだ作品『雨あがる』の撮影/制作現場から、担当者が生の情報をお伝えします。

1999年5月分はこちらです

6月1日(火) 晴れ 静岡県・伊豆
 本日の撮影のために、装飾部は一ヶ月前から仕込み用のタンポポを摘んでは冷蔵庫の保存して、撮影日に合わせて綿毛になるように生育を調節するという驚くべき神業をやってのける。
 スクリーンでは何気なく咲いているにすぎない、観ている人々もほとんど気づかないであろうタンポポ、でもそれは偶然そこに咲いていたわけではない、スタッフの画へのこだわりがそこにタンポポを咲かせ、そしておたよがその花に見とれて微笑む姿をさらに美しく飾ることは言うまでもない。
6月2日(水) 晴れ/曇り 静岡県・伊豆
 ピーカン狙いのラストシーン子浦ロケも天候思わしくなく、予定を三本杉ロケに変更、すでに子浦先発していた先発隊はとんぼ帰りで三本杉へ引き返すもタイムロスは免れずシーン70を残し、明日以降適宜再撮となる。
 それにしても、先日の太郎杉、山女宿といい、本日の三本杉といい、ラストを飾るにはうってつけのロケ地には違いないのだが、なんせ舗装されていない山道のため車輛は進入できない。頼るは体力といえど、一往復すれば脚が笑うありさまでなさけない。機材運搬も四苦八苦、運搬用の軽トラでかろうじて難を逃れたが一体何往復したことやら。ロケ隊泣かせとはまさにこのこと。
6月3日(木) 晴れ/曇り 静岡県・伊豆
 本日も天候すぐれず、6時の天候判断により先日残したシーン70のみの撮影となる。
 殿様一行、馬の走りを横位置と正面から捉えたショットはなかなかの見もの、わずか6頭されど6頭、レンズ次第で迫力が断然違ってくるのだ。
 三船殿様の出番もあとわずか、今のうちに馬上の雄姿をしかと目に焼き付けておきたい。
 ここ数日天候に振りまわされ、子浦合わせの隙間埋めの予定組みとなり欲求不満気味。最後の最後になってお天道様に見放されがちだが、ラストシーンの青空と海の青さは絶対に譲れない、腹を決めてじっと待つのみ。
6月4日(金) 雨/曇り 静岡県・伊豆
 無情の雨、スタッフも半ば撮休気分...ところが鈴木チーフはあきらめない。海向けショットがダメでも山向けなら、と本隊予定通り出発す。
 大井川のこともある、鈴木チーフを信じていれば...が、一向に晴れる兆しなく、14時をもって敢え無く撮影中止。
 鈴木チーフ、トランシーバーを通して力なく「ごめんなさい」の一言、でもスタッフ・俳優から不平不満が出ることなど一切ない。
 それほど難しい撮影であることを全員が心得ているからで、いかに鈴木チーフが重責を担っているか全員承知の上なのである。 明日はロケ最終日、後日出直しだけは避けたい。あーした天気になーれ!!
6月5日(土) 晴れ 静岡県・伊豆
 晴れた、晴れた!さあ、全部撮り切って東京へ凱旋だあ!
 予報では狙いの青空が見られるのは午前中のみ。各パート現場に到着するや早々と撮影準備に入る。わずかな晴れ間を狙ってここぞとばかりカメラが回る。スタッフ俳優とも空を見上げては雲行きをうかがい本番体制を整える。晴れた空、海の青さ、山の緑のなんと美しいことか、100%とは言えないまでも待った甲斐はあったはず、無事全カット撮り切り、これにて全ロケ日程終了、帰京の途につく。
 三船さん、加藤さん、若松さん、長沢さん、本日にて終了。本当にお疲れ様でした。
6月6日(日) 晴れ 撮休日
 本日撮休。とにかく眠りたい。
6月7日(月) 晴れ 諸準備
 本日午後1時より約3時間のラッシュ、内容は地方ロケ分のNG抜き。おおむね好評、ただ刀のヨリが殿様の褒め称える割には表面に粗が見えて思わしくなく、撮り直しとなった。
 見せ場の林の中の立回り、御前試合は2カメが効果的に捉えており、編集のし甲斐がありそう。
 ラストシーンの空と海の色が若干気に掛かるが今のところ左程支障はなさそうだ。
 そして、馬の走りが良い、特にシーン70の騎馬の一団ショットは小生のお気に入りである。
 とにかく、素材としては申し分ないカットばかり、編集部に大きな期待を寄せる。
6月8日(火) 晴れ 諸準備
 本日諸準備、特に動きなし。
6月9日(水) 晴れ オープンセット下見
 御殿場オープンセット下見、総勢21名、マイクロバスとワゴンで出発。
 監督、上田カメラマン、コンテに従いカメラポジション、カット割りを再確認。特機、照明用ハイライダー6台、ペガサスクレーンの置き位置等、各パートとも入念な打ち合わせで11、12日の本番に備える。
 一方、東宝セット準備も順調に進んでおり、メインスタッフも一安心といったところ。
 明日は、重機、特機、照明機材のセッティングあり、いよいよ後半戦の始まり、気を引き締めるべし。
6月10日(木) 晴れ 諸準備
 オープンセットとは読んで字のごとくオープン、すなわち、いつ何時誰でも見て触れるセットであるだけに、ほっとけば無用心になりがち。
 という訳で、本日よりサンペイさん(製作主任)が見張り番として現場泊り込みと相成る。月明かり以外、真っ暗闇の御殿場。時折、野犬の遠吠えが不気味に響き渡り、怯えながらもやっと眠りにつくや、自衛隊演習場から照明弾がヒューと夜空高く舞い上がり、まるで花火のごとくあたりを照らす...サンペイさんの眠れぬ夜が続く。
6月11日(金) 晴れ 御殿場西沢地区
オープンセット
 久方ぶりの撮影、しかも久方ぶりの本ナイターだけあって、スタッフ一同カンを取り戻すのに精一杯。加えて大掛かりな雨降らしとクレーンショットと来れば、無事終了したはいいが一同すでに疲労困ぱいの様子。
 安宿の泊り客たち初登場、これまでのお武家様とは一味違ったユニークなキャラクターたち、貧しくも明るさを忘れないその生きる姿にきっと多くの人々が共感を覚えるに違いない。
 サンペイさん、今日も御殿場に車中泊、去り行くスタッフを見送る姿がちょっぴりさみしそう。ああ、無情にもマイクロバスが出発、サンペイさんがだんだん小さくなって、小さくなって...闇に消えた。
6月12日(土) 晴れ 御殿場西沢地区
オープンセット
 御殿場は黒澤監督ゆかりの地、ここから数多くの名作が生まれ、小泉監督としても慣れ親しんだ地でもある。
 本作でも有力なロケ候補地として当然名乗りを上げたが、本作に限って許可申請をめぐり大変な時間と労力を費やした背景があるだけに、こうしてオープンセット撮影最終日まで漕ぎ着くことができて感激もひとしおである。
 天空とにらめっこしつつの晴天狙い難なく撮り切る。
 サンペイさん、目が血走っていて、何だかコワイ...2日に渡る車中泊で東京に戻る気力と体力が尽き果てたサンペイさん、「明日、帰るわ」と捨てセリフを残し、またもや御殿場泊まり!!サンペイさん、おつかれさまでした。
6月13日(日) 晴れ 撮休日
 本日撮休、私を探さないで下さい...
6月14日(月) 晴れ 東宝撮影所(セット準備)
 いよいよセット撮影を迎えました。村木さんデザインのセットは言うまでもなくパーフェクトの出来映え、加えて照明、装飾そして衣裳とメイクで扮装した俳優ががさらなる彩りを添えてセットに生命を吹き込こんでいく。
 小泉監督はじめメインスタッフはまさに料理の鉄人のごとし、素材としてのセットをいかに最高の料理(ショット)に仕上げるか、検討に検討を重ねる。
 そういう時の野上さんといい、斎藤さんといい、佐野さんといい、なんと無邪気なこと、きっと不老長寿薬を服用してるに違いないと思えるほどお若いのには驚かされる。願わくば永遠に日本映画界に君臨して欲しいと思っているのは小生だけではないはず、それほど魅力的な方々と御一緒できる喜びを痛感する今日この頃である。
6月15日(火) 晴れ 東宝撮影所(リハーサル)
 俳優総勢24名によるリハーサル。松村達雄さん、原田美枝子さん初出番。個人的に原田さんの大ファンである小生、1年ぶりの再開に胸が高鳴る。
 早々と午前中にはリハーサルを切り上げ、引き続き編集ラッシュ。原正人氏、佐藤勝氏同席のもと50分に渡る試写の後、なんとお二人から拍手をいただき、前代未聞の喜ばしい珍事が起こった。
 「雨あがる」伝説は今、着々と進行中である。
6月16日(水) 晴れ 東宝撮影所
 セット撮影初日、昨日のリハーサルの甲斐あって順調に予定通り撮り切る。
 本作ではNo.2ステージのみのセット撮影であり、機材移動がない分、楽ではあるが、なんせ狭い!
 スタッフ総勢70名、俳優部22名、取材陣十数名とくれば足の踏み場もなくて当然、俳優部の待機場所にも苦労し、挙句の果て表にテントを張ったものの外気温30度では暑くてとても居られない。ゴジラのステージ(No.8/9ST)が羨ましい〜〜。
 これが28日まで続くと思うと気が重い、なんとかしなくては。
6月17日(木) 晴れ 東宝撮影所
 伊兵衛、たよ、二人の絡みを重点的に、その他宿の大勢の方は本日お休み。久々に落ち着いた雰囲気で撮影に望む。
 フランスから取材陣2名。流暢な日本語で、応対する野上さんも終始にこやか、国際色豊かな1日であった。
 ところで、最近めずらしい差し入れをいただく。御殿場でお世話になった自衛隊富士学校さんからの品で、中身はなんと「乾パン」、非常時に慣れていないスタッフ一同にとってはとてもめずらしい代物である(なつかしそうな一部の大御所方も)。でも、コンペイトウとジャムまでおまけに付いてくるとは...またひとつかしこくなった気がする。とても好評で、富士学校の皆さん、ありがとうございました。
6月18日(金) 東宝撮影所
 本日、総勢38名の俳優部による撮影。セットでは最大規模である。出演者全員役付き。エキストラと違って、大勢といえども互いの演技にうまく合わせながら、場のバランスを崩さないところはさすが。
 製作委員会、現場視察後、東宝大会議室にて会議、コーディネーターの荒木さん(プロデューサー助手)がいつになく険しい顔つき、話しかけてもろくに返事もしてくれない...
 撮影後、製作委員会の差し入れによるバーベキューパーティー、スタッフ、俳優一同, 鉄板山盛りのお肉を前にして、箸を持つ手に力が入る。
 みんなの喜んでいる姿を見て、荒木さんの表情も元に戻る。10分と経たないうちに、会場の盛り上がりはピークに達し、そのまま終わりまでテンション下がらず、あっぱれ小泉組!  
6月19日(土) 東宝撮影所
 本日10:30〜12:00シーン14のリハーサル、13:00から監督は編集室へ、技術パートはセットにて6月21日の撮影準備に入る。
 桜井プロデューサー、鈴木チーフは撮り足しカット「山を望む丘」のロケハンに白樺湖へ出発。明日監督、上田カメラマンが電車で合流しロケハン予定。
 本日のリハーサル(宴会シーン)は終始にぎやか。カメラポジションもほぼ決まる。宴会シーンでは、宿人が披露する都都逸、幇間(太鼓持ち)芸、秋田音頭など盛り沢山、宴は俄然盛り上がりを見せ、黒澤作品の「どん底」でのボロ宿の宴のシーンを彷彿とさせる。前半の見せ場になること間違いなし。
6月20日(日) 撮休日
 本日撮休。監督と上田カメラマンは、昨日現場入りの桜井プロデューサー、鈴木チーフと合流し雨天ロケハン。
6月21日(月) 晴れ 東宝撮影所
 宿の宴会シーン本番!
 伊兵衛のおかげでご馳走にありついた宿人たち、にぎやかな酒の席のところに夜鷹おきんが帰ってくる。シンと静まる一座。見かねた飴売りが「ほんのお粗末...」と座を飛びだして手ぬぐい片手に踊りだす。と、あわせて太鼓や三味線が待ってましたと奏で出で、合の手、掛け声、笑い声、いよいよ一座は最高潮へ......後は見てのお楽しみ。
6月22日(火) 東宝撮影所
 無事に安宿の宴会シーン撮影終了。俳優・スタッフ一同揃って記念写真。そして衣装の黒澤和子さんが、20名の俳優さん一人ひとりに花束を贈呈し、スタッフ一同拍手で俳優部の労をねぎらう。
 引き続き午後から、伊兵衛とたよのくだりの撮影に入るが、ここ2日間のにぎやかさとはうって変わってひっそりと、なんだか寂しい気分。
 セット撮影も遺すところあと2日。いよいよ先が見えてきたぞ!
6月23日(水) 晴れ 東宝撮影所
 本日、原田美枝子さん、井川比佐志さんの全日程終了。次々と俳優さんが「お疲れ」になり、ほっとする半面、寂しい気も...
 夕方イマジカより、シーン16のネガにキズが付いているとの連絡あり。明日の撮影開始前にラッシュを見たうえで撮り直しを検討することに。幸いシーン16に出演している俳優さんが寺尾さんと宮崎さんだったから、最悪でも撮り直しが効くものの、これがもし安宿の宴会シーンだったとしたら...冷や汗ものだ。
6月24日(木) 曇り/雨 東宝撮影所
 前日のネガキズの問題で、午前中にラッシュを確認する。カット尻で見たところゴミ(キズではない)が付着していると判明したが、映写している限りは特に問題なし。再撮は取りやめとなる。
 宮崎淑子さん、全編終了。花束を受け取りながら「これで終わってしまうの?」と涙声。準備期間から足繁く東宝に通われ、リハーサルのない時でもスタッフと一緒に衣装のほぐしを手伝ってくれたり、等身大で私達と接してくださった。
 宮崎さん、4ヶ月間本当にお疲れさまでした。そしてステキなおたよさんをありがとう。
6月25日(金) 諸準備
 イマジカにて23、24日撮影分のラッシュ。各パートはラッシュの結果を待ってバラシの体制。
 終了後、特に問題ないとの連絡があり、13:30からセットのバラシに入る。
 一方、28、29日の都内ロケ準備に、スタッフ一同ラストスパート。
6月27日(日) 諸準備
 さて、皆のもの、覚悟はよいな! 決戦は明日あさってを残すのみとなった。
 兵糧尽き果て、我らすでに背水の陣。あとは猪突猛進あるのみぞ。スタッフ一同、心してかかるべし! 前途塞ぐものあれば、ことごとく撮って切り捨てい!!
 いざ、ヨーイ、スタート!
6月28日(月)  
 天気予報では昼頃から薄日が差してくるとのことだが、一向にその気配がない。
 本日、仲代達矢さん出番。後自宅前には、無名塾の塾生さんが揃ってお見送り。みなさん実に爽やかで、塾生さんを通して仲代さんのお人柄を十分伺い知ることができる。
 撮影の分量はたいしたことなく、午後1時半には撮影終了。監督・メインスタッフは明日のロケ先、講談社・野間道場の下見に出発。
 明日はいよいよクランクアップ。撮影物語もクライマックスを迎える。
6月29日(火) 講談社・野間道場
クランクアップ
 撮影最終日。天気予報は夜から雨。ロケセットの事情により撮影は日没開始だが、シーン自体はデイシーンのため、屋外に照明を仕込んでの大掛かりな撮影となった。予報通り、無常の雨。どしゃぶりの中での作業となる。
 最終日とあって豪華な顔ぶれが揃う。原正人さん、黒澤久雄さん、藤子不二雄(A)さん、さいとうたかおさん、黒澤作品のフランス語字幕を手がけるカトリーヌ女史。中でも黒澤久雄さんは、エキストラとして客人役で登場。少々照れ気味。
 午後8時50分。小泉監督の「カット!」で撮影終了。寺尾氏、仲代氏を囲んで鳴り止まない拍手の渦。感無量の寺尾さん、スタッフ一人ひとりと握手を交わしながら、ともに喜びを分かち合う。

 小泉監督および小泉組スタッフの皆さん。寺尾さんはじめキャストの方々。本当にお疲れさまでした。本作『雨あがる』は、21世紀の日本映画を飾るにふさわしい作品となりますことを、自信をもってみなさんにお約束できると思います。

 最後に「おたよ」さんから、黒澤監督へ。
 「わたくしは、見終わって晴れ晴れとした気持ちになる作品ですよ、と言ってもいいと思います」
 お後がよろしいようで。

約2ヶ月の間お届けした「撮影日誌」も、6月29日分が最終回となります。
ご愛読ありがとうございました。
アスミック・エース映画情報When The Rain Lifts

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