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アラン・パーカー インタビュー
大森さわこ
日本では本好きに静かに支持されただけだが、フランク・マコートの96年の自伝「アンジェラの灰」の海外での人気はちょっとすごいものがあった。英国では国民的ベストセラーとなり、今も本屋の目立つコーナーにある。アメリカでも大評判となり、ピュリッツアー賞を獲得。そして、この本が巨匠アラン・パーカーの手で、遂に映画化された。
「私もフランク同様、貧乏な幼年期を送った。もちろん、彼ほどひどくないが、原作を読
んだ時、とても共感できるものがあった」
撮影を終えたアラン・パーカーは、そのいきさつをまずそう語り始めた。昨年12月、ロンドンで彼にインタビューする機会があった。
「実は最初にローラ・ジョーンズ(「ある貴婦人の肖像」の脚本家)が書いたシナリオが
あった。悪くなかったが、原作の“ハート”が、十分、伝わってこず、結局、自分で完全にリライトすることになった」
こうしてアイルランドでの極貧生活を生きのびたひとりの少年を美しい詩情で描いた感動的な映画が完成した。
「原作者のマコートが映画版をとても気にいってくれたのが、何よりうれしかった。映画はナレーション形式で進み、成長したフランクの視点で語られる。大人の知恵を身につけた主人公が、幼年期を回想する物語だ。。私たちは彼が成功しているのを知っているから、その生活が辛くても、耐えられる」
恐慌時代のアイルランドで、過酷な日々を生き抜く主人公フランク。原作同様、この映画が見る人の心を打つのは、これが“人生のサバイバー”の記録だからだろう。彼はどんなに辛くても、希望を失わない。
「フランクはいつかアメリカに渡るという希望を持ち続けているが、それは私がかつて感じた気持ちでもある。フランクのアメリカに対する憧れと希望を出したかったので、音楽はアイルランドのものは使わず、アメリカのジャズを使った」
ビリー・ホリディのボーカルをドラマに効果的に盛り込み、不思議なユーモアを生み出す。このあたり、「ザ・コミットメンツ」のように音楽映画が得意なパーカーらしい個性が生きている。さらに演技陣の充実ぶり。フランクを演じる3人の新人も印象的だが、ふたりの演技派、気丈な母エミリー・ワトソンと気弱なロバート・カーライルの共演が映画ファンにはうれしい。
「エミリーは『奇跡の海』の演技が特に印象に残っていて、アンジェラは彼女しかいないと思った。カーライルは私の敬愛するケン・ローチにも推薦され、本人に会って決めた。彼は飲んだくれだが、彼は社会の犠牲者。そして、子供たちはそんな父をいつも愛されず
にいられない」
日本では家族の殺人事件が、新聞をにぎわす昨今。貧しいながらも、確かな愛で結ばれたフランク親子の姿に、現代からは失われた家族の絆を感じることができる。
「リムリックの街を再現するため、アイルランドを訪ねたら、かつての古い建物はもう消え、時代の変化を感じてしまった。。そんなロケ探しでとても役に立ったのが、日本のファンが作った『アンジェラの灰』のウェブサイトだ。日本人がどうしてこんなにアイルランドに詳しいんだ、と驚きつつ、感動しながら(笑)、ロケのプランを練っていったよ」
なんと、日本の“アンジェラ”ファンが、映画作りに大いに貢献していた! 映画版が日本でどう広がるのか、このベテラン監督も動向に大いに興味を持っているはずだ。
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