スペイン内戦
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蝶の舌

内戦の中の「蝶の舌」

 スペイン内戦を題材に扱った映画では、誰もがまず『誰が為に鐘は鳴る』(43)を思い浮かべるだろう。原作は、自ら内戦に参加した経験を持つヘミングウェイだ。その他、アラン・レネの『戦争は終わった』(65)、フレッド・ジンネマンの『日曜日には鼠を殺せ』(64)。新しいところでは、少女が人民戦線派の兵士と出会うビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』(73)や、カルロス・サウラの『歌姫カルメーラ』(90)がある。さらにケン・ローチの『大地と自由』(95)は共和派(反ファシズム派)の内部対立が描かれる力作だ。

 映画『蝶の舌』の舞台は1936年、冬の終わりから夏の始まりにかけて、まさに人民戦線派が総選挙で勝利した頃から、クーデター勃発までの最も緊迫した揺れ動く時期だ。  労働者階級や自由主義者たちの台頭を恐れ、特権階級(地主や教会、資本家)が軍部にはたらき掛け、それぞれの地域で独自のクーデターへの準備が開始される。  主人公モンチョの周りの大人たちも政治や選挙の話で持ちきり。コミュニストの父は信仰の厚いカトリックの母と教会について揉めている。グレゴリオ先生と司祭も険悪なムードが漂っている。

 さらに本作の悲痛なまでのエンディングは、「同じ国の人間同士が争う内戦はこのように始まっていくのか」とショックさえ覚える。ファシズムが村人たちを分断し、歴史の中でも最も暴力と野蛮が支配したと言われるスペイン内戦を象徴する衝撃の場面だ。
 グレゴリオ先生がモンチョに教える“蝶の舌”。「今は隠れていて見えないけど、蜜を吸う時に巻いていた舌を伸ばすんだ……」。それは、今はまだ訪れないが、やがて来る新しい時代への期待と希望が隠されたものなのかもしれない。その日が来るまで、のびのびと自然の中を生きていてほしい。そんな先生の願いは、彼の引退の日、生徒たちみんなに放たれる。「自由に飛び立ちなさい!」
蝶の舌
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