サイダーハウス・ルール
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『サイダーハウス・ルール』はこうして生まれた

第6章
リンドのメッセージ
<人はルールを決めることができるが、いつも現実の人生に対処しなければならない>



The Cider House Rules デルロイ・リンドは、リンゴ園の労働者を仕切るミスター・ローズを演じる。 「デルロイには自然な風格が備わっており、それは見ての通りである。また物柔らかさと彼の持つ力強さも伝わってくる。彼は思慮深く神秘的でもある。ミスター・ローズというのはとても複雑な役どころだ。それまでの生き方、善悪、自分が拠り所にしてきたルール、破ったルールにかかわらず、最終的にミスター・ローズは厳しい選択を強いられ、究極の犠牲を払う。デルロイには完璧なミスター・ローズ役としての静かなパワーを感じる」
 リンドはこの企画にずいぶん前からかかわっているにもかかわらず、その役を引き受けることについては懸念していた。「最初はどうしてもやりたいというわけではなかった。脚本の草案をおそらく実際に撮影に入る2年ほど前にもらって、昔読ませてもらった分やこれまでに見たことのある別のバージョンと比べた。ミスター・ローズが率いるリンゴ園の季節労働者の話が実際に縮小されていると思った。しかしラッセに会い、自分の心配を話すと、書き直すと言ってくれた。2週間後リライトされたものを読み返すと、サイダーハウスとリンゴ摘みの部分がすばらしく改善されていた。そのとき引き受けることを決めた」
 ハルストレムの姿勢がリンドの心に届いたようだ。とくにリンドが気にしていたのは、ミスター・ローズが微妙な陰も複雑さもない、いわゆる「悪い奴」と受けとめられることだった。新しい脚本によってその心配は和らぎ、レスリー・ホールランも指摘するように、ハルストレムの人間への視点にずっと近づいた。
「ラッセはどんなに極道に見える人物にも気高さを見つける。彼は本当に人を決めつけない。奇行や理解しがたい行動とか考え方もすべてひっくるめて人を理解し、何とかしてそれらを愛嬌に変えようとする。先に人を判断してしまわない。登場人物自身に行動を委ね、その人の目で物事を見ていくようにする。ミスター・ローズのような人物には、ありえそうな陰鬱な過去と本性を持たせ、こういうほかの面が加わることで、それでも魅力的だといわせる。ステレオタイプや注意書きひとつで終わるような人物を、監督は受け入れないだろう。とくに悪人、完全な弱みのある人物を描こうとすればなおさらである。彼のどの作品を見ても、バランスの悪い登場人物はひとりとして思い浮かばないのではないかと思う」
 撮影が進行するにつれ、監督は「俳優としての自分に敬意を払ってとてもつき合いやすい人」だ、とリンドは気づいていく。「監督は非常に寛大で、プロで、励みになり、いつも求めに応じてくれた。ラッシュを見たときは面白かった。私からすると、この映画は映像的にもリズム的にも、とてもヨーロッパ的な感じがする」
 ハルストレムはリンドのことを“驚異の人”と呼ぶ。「彼は威厳と複雑さを加味した深みのある演技を見せてくれた。とても思慮深く深遠な選択をした。けっして月並みな表現や下手な模倣には走らなかった。またとても洞察に満ちた考えで、ミスター・ローズと脚本の質をずいぶん高めた」とハルストレムは語る。
 準備段階で、リンドはマグワイアとともに、本作の「リンゴ摘み指導」をしたヴァーモント州の農夫にリンゴ摘みの技術を習い、実際の果樹園の仕事を研究した。リンドはまた林檎を摘む人たちの細かい生活や、ミスター・ローズの特徴でもある心の揺れをアーヴィングがどれだけ小説に割いているか、その分量にも注目した。『サイダーハウス・ルール』に登場するどの人物も二面性を持っているように、ミスター・ローズは傷を持つ英雄であり、立派で不埒でもある。
 原作を読むことでそのコントラストがよく理解できた、とリンドは思った。「原作から登場人物たちの曖昧な道徳観が読みとれたので、読んでいて面白かった。ミスター・ローズと娘をめぐる出来事は、たんに道徳的な問題となることが多い。最初に気になったのは、ミスター・ローズが徹底的に悪い奴に見えそうなところだった。しかし原作でも、そして思うに脚本でも、ホーマーを含むたくさんの登場人物に同じような問題があった」
 リンドは、登場人物がこの“問題”を解決する方法は難しい映画タイトルに帰せられる、とつけ加える。「私が思うに、この映画は現実と理屈の上での人生の違いと、そのふたつのせめぎ合いを描いたものである。人はルールや規則を決めることはできるが、それが何をまとめていようと、人はいつも現実の人生に対処しなければならない。この『サイダーハウス・ルール』というタイトルは、こうした葛藤、結局はその世界の現実とは関係のないこの特定の世界に課せられた一連のルールを要約している」
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