「それはすべて、オーソン・ウェルズの劇団が政府の上演禁止処分に反抗し、すべて の危険を冒してミュージカルを敢行した夜のことを聞いたときに始まった」
 監督・脚本・製作のティム・ロビンスは、映画『クレイドル・ウィル・ロック』製 作の発端をこう振り返る。「失業保険もなく、最低賃金も福祉も保証されない時代。
アメリカの混迷が忍びよる気配があるだけだった」とロビンスが語る1930年代、大恐 慌時代のニューヨーク。そのドラマチックな状況を、大富豪から浮浪者まで網羅して 描いたのが、この壮大な野心作だ。
多岐にわたる多彩な役どころを要するこの映画は、キャスティングが決め手だった
主要人物だけで20人以上、しかも各画面が密接に重なり合うため、全体的に調和す る雰囲気も必要とされる。さらにほとんどの登場人物が、ある程度、実物に忠実でな ければならなかった。これはかなり大変な作業だった。
 
しかし、ロビンスはこれまで もそれぞれの役にこの人しかいないと思わせるような、俳優選びの天賦の才能を見せ てきた。映画公開と共に出版された写真集『クレイドル・ウィル・ロック:映画と瞬 間』のあとがきで、ロビンスはこう記している。
「『なんとすごいキャスト!』私がこの映画のことを人に話すとまず返ってくるのが この反応である。キャスティング監督のダグ・エイベルと私はむちゃくちゃに長い時 間をこの映画の配役のために費やした」
その結果、ロビンスの公私に渡るパートナーのスーザン・サランドンや、ヴァネッ サ・レッドグレイヴ、ジョン・タトゥーロといったベテラン勢に加えて、エミリー・ ワトソン、ジョーン&ジョン・キューザックの姉弟らがそれぞれ個性を発揮。そして 、若きオーソン・ウェルズという大役には、スコットランド人俳優アンガス・マクフ ァーデン、マーク・ブリッツスタイン役にはハンク・アザリアが多数の候補者の中か ら抜擢された。また、腹話術師のクリックショウ役については、ロビンスは当初、演 じたビル・マーレーよりもっと年配者を想定していた。が、たまたまTVの「デヴィ ッド・レターマン・ショー」に出演中のマーレーが、オスカーを取れるかどうか質問 され、アカデミー賞の前にハインズマン賞(フットボールの賞)を取るかもしれない と答えているのを見る。
 
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