もうひとつこの映画の重要な要素は音楽だ。作曲と音楽監督を務めたデヴィッド・
ロビンスは、『ボブ・ロバーツ』や『デッドマン・ウォーキング』に引き続き、ティ
ムのために『クレイドル・ウィル・ロック』の音楽を書き下ろしたのはもちろん、マ
ーク・ブリッツスタインの音楽をアレンジからプロデュース、録音、試演まで協力し
た。「映画音楽については、ブリッツスタインの音楽への敬意はもちろん、1930年代
のニューヨークの気分を伝えるさまざまなタイプの音楽と調和するよう意識した」と
デヴィッドは語る。「当時からかなり人種のるつぼであったニューヨークにふさわし
く、多くの文化背景を持つ民族音楽は不可欠だった。『クレイドル(揺りかご)』と
いう主題もあって、音楽はこの映画にまた別の重要な方向性を与える役目を担い、も
うひとりの登場人物に匹敵するといえる」彼はルーマニアやハンガリーのジプシー音
楽はもちろん、イタリア、アイルランド、スペイン……と数多くの民族音楽も聴き、
ボードビルやサーカスの要素に取り入れた。「その結果、多様な音楽が混在し、この
映画の多彩な人物や歴史的な出来事やエネルギッシュな性質を補う形となった」
製作の終盤、ついに大フィナーレ、ミュージカル『クレイドル・ウィル・ロック』
上映シーン撮影の日を迎えた。ここで失敗したら今までの努力は水の泡。映画全体が
だめになる。
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そんなプレッシャーを全員が感じつつ、舞台に3台、客席に2台のカメ
ラがセットされ、真夏にウールの衣装を着せられた1000人のエキストラが劇場を埋め
尽くした。8曲のナンバーは、それぞれ1回しか撮る時間はない。ティム・ロビンス
は前出の『映画と瞬間』にこう記している。「その日の撮影でこのあと起こったこと
は、これまで一度も経験したことがないことだった」「エミリー・ワトソンが立ち上
がった瞬間、場内にざわめきが起こった。彼女の顔は完全に怯えきっているが、静か
な決意も感じられた。場内を電撃が駆けめぐっているようだった」「タトゥーロが立
ち上がる頃には会場には火がついていた」「あの日、ここで笑ってほしいとか、ここ
で拍手を、というような指示は一言も出さなかった。みなさんがスクリーンに見てい
るものは本当の出来事であり、1937年6月のあの夜に近づきたいと私が願ったものに
限りなく近いものだった」
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