監督:ティム・ロビンス
主演:スーザン・サランドン
来日記者会見


(2000年8月7日)
来日記者会見
Q:なぜこの話を映画化しようと思ったのですか?
ティム・ロビンス:
 ある人から『クレイドル・ウィル・ロック』の話を聞いてやりたいと思ったが、どうやって話をまとめるかは、考えが及ばなかった。しかしどうしてもやりたかった。
 自由や民主主義の実現のために立ち上がる一人の人間の勇気が世の中を変えるのだというテーマをもとにこの作品を作りたかった。
Q:ジョン・ハウスマンやオーソン・ウェルズがスピーチした、という説もありますが、あのようなラストにしたのはなぜですか?
ティム・ロビンス:
 いろいろな人がいろいろなことを書いている。それぞれのスピーチを第一稿では入れたのだが納得いかなかった。ある日、家にゲストを呼んで話をしていた時、ゲストの一人で昔ハウスマンやウェルズのアシスタント舞台監督をしていた人物が言ったんだ。
 “あの日スピーチなんてなかったよ。あれは、一人の女性があらゆる物の前に立ちあがってやったことなんだ。オーソンやハウスマンは有名で金持ち、たとえあんな風にユニオンとぶつかったとしても潰れはしない。しかし(『クレイドル〜』を成功に導いた)彼女は何のクレジットも与えられずに闇に消えた。一番のクレジットを与えられてしかるべき人物なのに。”
Q:ティムさんは監督をする時最初にスーザンさんに出演を依頼するのですか?また、スーザンさんは、ティムさんに同じく最初に出演を希望するのですか?
スーザン・サランドン:
 別に必ずしもそういうわけではない。『デッドマン・ウォーキング』の話を持ち掛けたのは自分で、『クレイドル〜』は彼が長年温めてきたアイデアだった。
ティム・ロビンス:
 僕はアメリカ最高の女優と暮らしている。監督・プロデューサーとして自分は最高に幸せ。
Q:『デッドマン・ウォーキング』でアカデミー受賞後、制作環境に変化はありましたか?資金集めが楽になるなど。
ティム・ロビンス:
 制作はいつもとても大変。知り合いでオスカーを8回もとった人物 ―その人物と次回作を一緒に作ろうとしているのだけれど― がいるが、その人物でも大変な苦労を伴うと言っている。
Q:(スーザンさんへ)今回の役はインテリジェントでセクシーでいかがわしく演じていましたが、この演技をどう解釈したのですか?
スーザン・サランドン:
 ピーターパンとクック船長だったらクック船長を演じるほうが楽しい。ティムと一緒ではなかったけれど、悪役は前にもやっている(“ Berden of Sincirelity”?で)。本人は悪いと思ってやっているのではない、悪いと分かっていないのに悪だから面白い。悪役を多元的に演じるのが面白い。いい人が間違いによって破綻してしまう、たとえば『デッドマン・ウォーキング』の主人公はそうでしたね、そんなふうに、多元的に悪人を捉えます。本人の悩み、頑張りをいかに理解するかがコツです。
Q:スーザンさんの役は実在の人物ですか?
スーザン・サランドン:
 そうです。
Q:この映画の素晴らしさを女性に向けてアピールしてください。
来日記者会見 ティム・ロビンス:
 女性に向けてですか…?いい男がたくさん出ています。みんな独身です。
スーザン・サランドン:
 この映画ではほとんどの女性が男性より賢い。しかし、権力は男性のもとにある。それをどのように利用するか、いかにして生き延びるかで女性は苦労する。
 ラグランジェ伯爵夫人(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)の賢さを夫は理解していない。エミリー・ワトソンの役も、どうやって女性が生き延びていくかを模索して苦労している。ディエゴ・リヴェラが、“ある一人の男の情けにすがって生きてるじゃないか”と言った時、(フリーダ・カルロが)“みんな誰かにすがっているじゃないか”というでしょ。誰にでも権力におもねる部分はある。でも問題はそれをどこまで受け入れるか、その境界線をどこに引くかということです。ジョン・タトゥーロがは理想主義者でしょう。かれはファシストに妥協しないため家族をも捨てて家を出てしまう。妻は、子供にろくに食べ物も与えられず、ネズミが出るような家に暮らしていることに対して不満は言うのだけれど、ラストでは夫についてきてよかったと言うわけでしょう。それがこの映画の面白いところね。多面的なのよ。
Q:好きな日本人監督は誰ですか?
ティム・ロビンス:
 黒澤明の『どん底』は好きです。でも、残念なことに、僕たちは、なかなか日本の監督の作品を見ることはできないんだよ。
Q:パートナーと一緒に映画を作る利点は何ですか?
ティム・ロビンス:
 彼女と一緒に仕事をしていい点は、「もっと金をくれ」と言わないところだね。
 でも彼女が稼いでくれないと生活できない。その他の利点は、話し合うのに手軽だということだ。仕事の喜びを分かち合える。自分達なりに満足できる。長く観てもらえる、意味深い作品が作れる。でもすべてよい点でもあり悪い点でもあるかな。
Q:子供たちにも映画業界で働いて欲しいと思いますか?
ティム・ロビンス:
 別にエンターテイメント業界で働くのは構わない。ただその前にまずはきちんとした教育を受けさせたい。髪型と靴だけにしか関心のない役者にはなってもらいたくない。教育と、ロックンロールだね。  
Q:ティムさんと他の監督さんとでは仕事に違いはありますか?
スーザン・サランドン:
 いろんな監督と仕事をしてきました。メキシコ人、フランス人、オーストラリア人。
 アメリカの監督でもその人によって興味やコミュニケーションの取り方が違う。
 監督は船長です。一度船が陸を離れてしまえばどこに向かうかは分からない。物語の展開がうまい監督とそうでない監督。俳優を大切にする監督、ないがしろにする監督。ビジュアルが大事でセリフにはあまり重きを置かない監督。女性がどのように考えるかまったく考慮しない監督。そのすべてがハリウッドにはいるのです。
 一緒に仕事をしたい監督は、何を言いたいのかをしっかり持っている監督です。すべての俳優(男優・女優)、クルーを大変にリスペクトする人。現場で働く人の協力の大切さを理解できる人。そんな監督と仕事をしたい。
 映画は時折、想像もしなかったような力を持って生れることがある。逆にコントロールすればこうこうになる、とは断言できない。そこが映画の魅力です。『クレイドル〜』は舞台ですが、俳優がこんなことをしてみたいと思い、結果が生まれる。その過程をティムは描いている。ティムは非常に才能のある監督です。監督でありまた自ら俳優でもあるので、俳優を大切にしてくれます。彼は伝えたいと思うテーマを必ず選びます。それが彼を最も興味深い監督にしている理由でしょう。
Q:『ボブ・ロバーツ』では主演と監督両方をこなしましたが、その後の二作は監督のみです。主演と監督を両方こなすのは大変ということですか?
ティム・ロビンス:
 これは金銭面の問題です。『ボブ・ロバーツ』の時はお金がなかったから自分で出た。あの経験でもう二度とやりたくないと思った。俳優としての自分と付き合うのはもういやだ。監督だけのほうが楽。体型を変えたりとか好きにできるし。
Q:スーザンさんは一番英語の話し方がきれいだと思う(Best Actressだ)。英語をどこで勉強されたのですか?イタリア風の発音もできるのはなぜですか?
スーザン・サランドン:
 イタリアで5ヶ月間ムッソリーニの娘の役をやっていたことがある。あの役と同時代の人物です。あの時はアンソニー・ホプキンス、ボブ・ホスキンスとともにイタリア中を旅した。不思議なことに、私の祖父母はシシリー人です。ウェールズの血も入っている。だから私は青い目に赤い髪をしたイタリア人なのです。
 ジョン・キューザックもエミリー・ワトソンもティム・モニックが発音指導、英語のチェックは全部しました。エミリーは、イギリス訛りが出ないようにね。
 みんな早口で字幕を読むのが大変だったでしょう。マーロン・ブランド以来映画のセリフがゆっくりになったのだけれど、あの当時は、みんなあんなに早口だったのです。だから今回俳優も苦労して早口でしゃべっています。
 私自身は大学で4年間哲学、Military Strategy、文学を勉強していたけど、それらが私の語学習得に何ら役に立っているわけではありません。
Q:アメリカの大変な時代を描いていますね。アメリカでの反応はどうだったのですか?
ティム・ロビンス:
来日記者会見  よかった、重要な作品だ、感動したと言って泣いてくれた人々がいっぱいいた。ただ上流階級の人々は腹を立てていたね。でもそういうつもりで作っていますからね。ただ、エリート達がこの映画の興行的価値を決めてしまうのが残念。
 映画が評価されるのには10年かかる。『ショーシャンクの空に』は、発売されて2年後に初めてナンバー1のレンタルビデオになった。映画として成功したか否かを公開初日や第一週の成績だけでは決めたくない。
 オーソンが酒飲みだという描き方に反対する人がいるけれど、僕がリサーチしたところそれは事実だったようだ。僕はこの映画を彼に捧げている。どんなに酒飲みだろうともああいうすばらしい作品を作ることができたんだ。人によっては、オーソンのような伝説的人物を、ちょっとでもつつくと過剰に反応する場合がある。僕は人間を描きたい。イコン(偶像)は描きたくない。彼はとんでもなくワイルドでアナーキストで危険な人物だった。彼と一緒にいるといやな思いをすることもしばしばあった。しかしものすごく頭がよくてそして若かった。みんなおそらくそんな彼が恐かったんじゃないかな。
通訳:小林礼子
司会:襟川クロ
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