| サンダンス映画祭の全観客の喝采を浴びた斬新なストーリー |
スクリーンの中の男と女。もし、この2人が出逢えないまま映画が終わってしまったら...。
そう、もちろんそういう映画はありえない。だが、そうした一抹の不安を抱かせるのが、この『ワンダーランド駅で』である。同じルートの電車で通勤しているという唯一の共通点を起点に、二人が出逢いそうで出逢えないシチュエーションが次々と重ねられていく。“いったい、いつになったらこの二人は出逢うの?”それとも...。卓抜なアイデアとサウダージな感覚に包まれた本作は、98年のサンダンス映画祭で最も注目を浴び、同年フランス、ドーヴィル映画祭でグランプリと観客賞に輝いた。
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本当の愛を探す女 人生の意味を探す男 知らない同士のふたりは、出逢えそうで出逢えない |
夜勤明け、看護婦のエリンはいきなり政治活動家のボーイフレンドのショーンから別れを告げられる。エリンの母は夫を亡くし、今はすっかり奔放な恋愛に溺れ恋人が絶えることがない。彼女は娘にまた新しい恋を見つけて幸せになってほしいと願い、エリンの名でこっそり恋人募集のパーソナル広告を新聞に出す。広告が出た事を聞かされたエリンは母親に猛反発するが、広告を見た男たちからはボイスメールが次々と寄せられ、彼女もつい会ってみようかなという衝動に駆られる。カフェで出会う見知らぬ男達の矢継ぎ早の口説き文句、そしてキレのいいエリンの逆襲。
いっぽう配管工のアランはボストン水族館でボランティア・ダイバーとして働き、将来は海洋学者を目ざしている。これまでの人生を見つめ直し、自分に正直に生きていきたいと心から願っている。しかし学費や父親の借金を片に、水族館にまつわる汚職に関わることを余儀なくされたかと思えば、フェロモン漂わすクラスメイトに言い寄られたりと、思わぬ方向に惑わされていく。
ついにエリンの前に優しくてロマンチストのブラジル人が現れる。足元を救われるようにたちまち恋に落ちるエリン。とにかくすべてを断ち切ろうと思い立つアラン。絶えず流れる“恋”の予感とは裏腹に、出逢えそうで出逢えないふたりは、それぞれ別々の道を歩き始めたかのように見えたのだが.....。
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ボーダレスな才能が結集して生まれた瑞々しい世界 全編に流れるボサノヴァが醸し出すサウダージな感覚 |
女と男、二人の間に起こるチャーミングで思いがけない出来事の数々。ただ、巷に溢れるラヴ・ストーリーとは違って、様々な出来事は二人が出逢う前に起こってしまうという斬新なアイデアをもとに物語は進行していく。現代のボストンを舞台に、恋や人生の本当の意味を探す女と男。ともすれば簡単に恋が訪れそうなシチュエーションなのに、それでも二人は出逢えない...。インディペンデント映画でありながら、独りよがりな感情を押し付けることなく、役者のちょっとしたしぐさ、気の利いたセリフ、たゆたうような映像が観る者全てを爽やかな気分にさせてくれるそんなラヴ・ストーリー。ある者は女性の切なさに共感したり、男性の生き方に相槌をうつだろう。流れるように過ぎていく映像に、日曜の午後の静かな時間を思う者もいるだろう。それは効果的に織り込まれるボサノヴァのリズムやスクリーンからあふれ出すアクアな感覚がそうさせているのかもしれない。
本作が2作目となる監督のブラッド・アンダースンは、インディペンデントでしか作りえない頭脳と表現手法を用いて、現代の大人の恋のあり方と人生の考え方、出逢えそうで出逢えない現代の男女の悲哀と可笑しさを見事に表現。これまでありそうでなかった斬新なアイデアで挑みつつも、本作をとてもチャーミングに仕上げている。本作では共同脚本、編集も手掛けた。処女作は96年サンダンス映画祭コンペティション部門出品、サンタ・バーバラ映画祭で最優秀監督賞、フロリダ映画祭で最優秀ナレーティヴ賞を受賞した”The Darien Gap”。97年には“ヴァラエティ誌が選ぶ、注目のインディペンデント界新人映画監督10人”にも選ばれた逸材である。製作にはミッチェル・ロビンズ、共同製作にはローラ・ベルニエリとレイチェル・ホロヴィッツ。ブラッド・アンダースン監督の才能に惚れ込んだ3人は処女作“The Darien Gap”からの続投となる。ブラッド・アンダースンと共同で脚本を手掛けたのはブレット・レナード監督の『ヴァーチャル・ウォーズ』の脚本、音楽に協力したリン・ヴァウス。本作ではエリンに電話をかけてくる男のひとりダリル役でも出演している。手持ちカメラの手法を用いて、ボサノヴァのサウダージな世界を見事に表現したのはドイツ出身の撮影監督のウタ・ブリーゼウィツ。そして、情感たっぷりのオリジナルスコアを担当したのは、作曲家でギタリストでもあるクラウディオ・ラガッツィ。ボサノヴァのクールでロマンティックなリズムが、うまく現代のボストンとのコントラストをきかせ、男女の心のゆらめきをよりいっそう鮮やかにしている。
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| 爽やかな感動を届ける実力のキャスト |
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メランコリックな雰囲気をもちながらも、同時に輝いている女性エリンには『隣人は静かに笑う』『フラットライナーズ』『死の接吻』のホープ・デイヴィス。運命など信じないと言いつつも、また愛を信じさせてくれる誰かを切実に求めている複雑な演技を披露している。自らの人生を大きく変え、海洋学者になりたいとひたすら努力する男アランには『ザ・クロウ』のアラン・ゲルファント。エレンの元恋人で政治活動家のショーンには『ブギーナイツ』、『ビッグ・リボウスキ』の演技が印象深いフィリップ・シーモア・ホフマン。金貸しのフランクには『タクシー・ドライバー』、『スモーク』のベテラン、ヴィクター・アーゴ。フェロモンふりまくアランと同じクラスの娘ジュリーに『ルル・オン・ザ・ブリッジ』のカーラ・ブオノ。エリンをたちまち恋の気分にさせてしまうアンドレには『身代金』『スモーク』のホセ・ズーニガがあたり、ブラジル人の典型的な口説きのスタイルをチャーミングに見せてくれる。その他、エリンの母親役に『トゥルーマン・ショー』のホランド・テイラー、『マーキュリー・ライジング』のロバート・スタントン、『乱気流 タービュランス』のキャリー・ソーン、サタデー・ナイト・ライブにも出演した『パーフェクト・カップル』のロバート・クラインらが脇をかためる。テンポの良いコミカルな演技が、作品に見事なアクセントをつけている。
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