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楽園をください

Interview with ANG LEE
■アン・リー/インタビュー

■アメリカの歴史上、最悪の時代に生きた若者の青春に、とてもドラマティックなものを感じた。私が大切にしている様々なテーマがすべて詰まっている。今までの私の作品の中で最大のスケールを誇る作品だ。

■私が育った台湾では、年配の人たちが“若者がアメリカナイズされてきた”といつもこぼしていた。「若者が伝統を守らないから、独自の文化を失いつつある」と。
 やがて私は自分の映画を持って色々な国を訪れるチャンスができたが、どこに行っても同じ不満の声を聞いた。どうやら世界のかなりの地域がアメリカナイズされているようだ。
 原作であるダニエル・ウッドレルの「Woe to Live On」を読んだ時、私は、ある意味で、南北戦争こそが“すべての始まりだったのだ”と気づいた。あの時、“ヤンキー(北軍)”は領域だけでなく、生活様式と思想のすべてに対して勝利を勝ち取ったのだ。

■ヤンキーの侵略と勝利は表面的な意味(軍事的、経済的なヤンキーの広がり)に留まらず、内面的な意味もあった。それはすべての人を変えた。誰もが平等であり、誰もが自分自身を十分に生かす権利を持っている。これがヤンキーの原則だ。そこで私たちはどうすれば自分を最も生かせるかを知るために、自分自身、自分の個性を分析しなければならない。これは非常に現代的なことである。それに基づく新しい社会秩序もそうだ。私たちは他人の自由をも尊重することを学ぶ。伝統に対する結びつきを失いつつも。

■これが私にとって南北戦争が意味するところだ。
 そして、これは私と同様に、ヤンキーではないこの映画の若者たちにとって意味するところでもあると思う。南北戦争は血と汗を流す肉体的な戦いというだけではなく、個人的な戦いでもあった。現代の私たちが生きている新しい世界、民主主義と資本主義の世界へ導いた戦いだったのだ。

■物語は南部の若者たちの視点、まもなくヤンキーに敗れる者たちの物の見方で始まる。しかしその後、2人のよそ者(ドイツ移民と黒人奴隷)の視点と若い女性の視点にゆっくりと焦点を移していく。彼らを通して、私たちは“自由がもたらす変化”を体験する。この作品が描くのは彼らの解放であり、彼らの青春である。
 つまり、台湾人として、ヤンキーに生活を完全に変えられた南部の人々に私は自分を結び付けることができる。しかし私はまた、自由をつかもうとし、そのために闘う“よそ者たち”により強く同調するのだ。

■南北戦争の前、カンザスとミズーリの州境はアメリカのフロンティアだった。その州境は単に南と北の境目ではなく、開拓された地域と未開の西部の境目でもあった。しかし、現在、そこは国の中央だ。2つの辺境の州を分けたビッグ・マディー・リバー(ミシシッピー川)はマーク・トウェインが蒸気船で渡り、純粋なるアメリカ文学を創り出した場所だ。
 つまり、この物語はアメリカのごくごく中心部を描いている。この中心部はかつて、そして今でもしばしば人種問題や他の問題で引き裂かれている。
 アメリカは自由を約束して世界を征服しているかに見えるが、彼らはまだ自分の国を完全に征服しておらず、自分の自由を達成していない。この現在進行中の葛藤と希望を全編で表現した。
アン・リー監督
◆監督|アン・リー

 1954年10月23日台湾生まれ。
 18歳で国立芸術学院映画演劇学科入学、映画監督の仕事を学び、白黒の8mm映画“星期六下午的懶散後”などを創った。そして、兵役終了後の78年にアメリカへ渡り、イリノイ州立大学で舞台演出を学び芸術学士を取得した後、80年にニューヨークへ移ってニューヨーク大学映画学科へ入った。5本の映画を制作、83年にはスパイク・リー監督の60分の中編“Joe's Bed-Stuy Barbershop: We Cut Heads”のアシスタント・カメラを務め、85年の監督作品“Fine Line”がニューヨーク大学映画祭で作品賞と監督賞を受賞した。
 その後は脚本執筆に励み、グッド・マシーンに見出され、91年に『推手』で監督デビュー。ベルリン映画祭で上映されて、アジア・パシフィック映画祭では作品賞を受賞。台湾アカデミー賞の金馬奨で9部門ノミネート、主演男優賞、助演女優賞、審査員特別賞3部門で受賞した。これは“父親3部作”の1作目にあたる。監督2作目にして“父親3部作”の2作目『ウェディング・バンケット』(93)はベルリン映画祭でプレミア上映となり金熊賞を獲得、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の外国語映画部門にノミネート、インディペンデント・スピリット賞にも6部門ノミネートと国際的に高い評価を得た。台湾では金馬奨で作品賞と監督賞を含む5部門で受賞。そして“父親3部作”最終作『恋人たちの食卓』はカンヌ映画祭監督週間オープニング作品となり、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞で再び外国語映画賞にノミネートした。95年にはエマ・トンプスン、ケイト・ウィンスレット、アラン・リックマン、ヒュー・グラント主演で初の全編英語映画『いつか晴れた日に』を監督。ジェーン・オースティンの同名小説をトンプスンが脚色したこの作品はベルリン映画祭で2度目の金熊賞を獲得、アカデミー賞で作品賞を含む7部門ノミネートで脚色賞を受賞した。ゴールデン・グローブ賞でも作品賞と脚色賞、ボストン映画批評家協会とナショナル・ボード・オブ・レビューで作品賞を受賞した。自身もニューヨーク批評家協会とボストン映画批評家協会で監督賞を獲得。そして、97年にはリック・ムーディの小説をジェームズ・シェイマスが脚色した『アイス・ストーム』を監督。主演はケヴィン・クライン、ジョーン・アレン、シガーニー・ウィーバー、クリスティーナ・リッチ、トビー・マグワイア。カンヌ映画祭でプレミア上映され、シェイマスが脚本賞を受賞、ニューヨーク映画祭ではオープニング・ナイトを飾った。
 本作を経て、2000年には『グリーン・デスティニー』で中国古来の武侠ロマンに、チョウ・ユンファ、ミシェル・ヨー、チャン・チェンなどを主演に招いて初挑戦、脚本もシェイマス、ワン・フィリンと共同執筆している。
 最新作はグッド・マシーン制作の“Berlin Diaries, 1940-45”の予定。

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