

アメリカ合衆国の歴史の中で、ただ一度だけ国土が戦地と化したことがあった…“南北戦争”という名の内戦である。
南軍と北軍の戦いは1861年に勃発し、アメリカ史上最も多くの犠牲をもたらした。それは、あのヴェトナム戦争のおよそ12倍、62万人もの戦死者をだすという最悪の血戦だった。
しかし、戦いの本拠地とは遠く離れた場所で、もっと過酷な殺し合いが繰り広げられていた。アメリカの中心地カンザスとミズーリの州境では、敵は軍隊ではなく、すぐ近くの人間、まさに隣人対隣人の血の争いという極限状況だった。
彼らが倒そうとしていたのは南でも北でもなかった。彼らの中には、いったい何と戦えばいいのか、どう戦うべきなのかさえ、わからない者もいた…。
これは、アメリカ史上最悪の時代に青春を生きた男たちの過激で切ない日々を描いている。
果たして、彼らは“青春”という無垢の時期を、いつ、どこで、どんな想いで迎えたのだろうか。
さらに、これまで隠されていた闇の戦いを通し、現在の“アメリカ”の姿をも鮮烈に描き出す。自由を約束し、世界を征服しているかのように見える国。しかしそんなアメリカは、いまだに自分たちの本当の自由を達成できず、苦しみを重ねている。パラダイスになり得ていないのだ。
アメリカの“はじまり”と“今”を映し出した本作は、名匠アン・リーが贈る、21世紀の幕開けにふさわしい「若者の、若者による、若者のための」青春映画である。

1861年、アメリカの中央に位置するミズーリ州。
ドイツ移民の青年ジェイクと裕福な農園主の息子ジャックは、希望に満ちた青春をおくれるはずだった。が、彼らは南北戦争の勃発と同時にその当然の権利を絶たれてしまう。父親を北軍派に殺されてしまったジャックはもちろんのこと、本来なら北軍のドイツ人グループに身をよせるべきジェイクも、ミズーリで育ったという理由から南部の男として南軍派のゲリラ隊“ブッシュワッカー(薮の中から奇襲をかける者たち)”に加わった。
しかし彼らにとってこの戦いは、北でも南でもなくなっていった。戦うことに意味があるかさえも、次第にわからなくなってしまっていたのだ。
南北戦争という歴史の必然の中で、偶然に出会った男たち…狂気を秘めた隊の中心人物ブラック・ジョン、黒人であるがために仲間からもよそ者として扱われるホルト、誰彼かまわずかたっぱしから人を殺していくピット…激動の時代に漂い、出会った彼らは何を求め何に彷徨うのか。
やがて、歴史的な事件“ローレンスの大虐殺”が幕を明ける。

はじまりの“若者”たちを繊細に力強くスクリーンに刻み込むために、今、最も旬の若手男優たちが結集した。
ジェイク役には『サイダーハウス・ルール』のトビー・マグワイア。『アイス・ストーム』に続きアン・リー監督作品の主人公を演じる、若手実力派ナンバーワンだ。持ち前の無邪気さと芯の強さを存分に発揮している。その親友ジャック役は『スクリーム』のスキート・ウーリッチ。ジェイクと深い絆で結ばれるようになるホルト役には『バスキア』のジェフリー・ライト。周囲から‘よそ者'扱いされる彼の切なさと内に秘めた熱い思いは、我々の心を捉えて離さない。さらにブッシュワッカー部隊のリーダー、ブラック・ジョンには『シン・レッド・ライン』の主役に抜擢されたジム・カヴィーゼル。そして、敵味方関係なしにハエのように人間を殺しまくるピット役には『ベルベット・ゴールドマイン』のジョナサン・リース・マイヤーズ。彼の狂気じみた銃さばきと雄叫びは、鳥肌が立つほどにセクシーである。
また、アラスカ出身のシンガー、ジュエルが映画デビューを果たしている。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のビョークや『スワロウテイル』のChara同様、“歌姫”の登場は大きな話題の一つだ。

『グリーン・デスティニー』の名匠アン・リー。『推手』『ウェディング・バンケット』『恋人たちの食卓』の“父親3部作”で全世界の映画祭で数々の賞を受賞、『いつか晴れた日に』ではイギリス文学を映像化、さらに『アイス・ストーム』でアメリカの郊外の家庭の空疎感や孤独感を描くなど、いまや世界的な活躍をみせる。その彼が、遠い時代と場所へ、そしてある若者たちが過ごした青春への旅に我々をいざなう。台湾出身の彼が、疾走したアメリカのはじまりを見事にスクリーンに再現し、現代に生きる我々の心に響く、大いなる讃歌を描き出した。
原作は、ミズーリ出身の作家ダニエル・ウッドレルが1987年に発表した小説「Woe to Live On」。これをもとに脚色を行ったのが、長年にわたってアン・リーと活動をともにしてきたジェームズ・シェイマス。『アイス・ストーム』『グリーン・デスティニー』に続いて脚本を担当した。
撮影監督には『アイス・ストーム』でもアン・リーと組んだフレデリック・エルムズ。彼は『ワイルド・アット・ハート』『ブルー・ベルべット』等のデイヴィッド・リンチの一連の作品や、『ナイト・オン・ザ・プラネット』等を手掛け、シャープな映像が定評のある名手だ。本作でも深く、みずみずしい映像を作り出すことに成功している。そして音楽は『17歳のカルテ』『アイス・ストーム』等のマイケル・ダナ。圧倒的なスケール感と疾走感をもつ旋律が我々を包んでくれる。また、本作で女優デビューしたジュエルが歌う「ホワッツ・シンプル・イズ・トゥルー」は、撮影中に書き下ろしたオリジナル曲で、エンディングを感動的に飾る。
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