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楽園をください

TOBEY MAGUIRE
ビターな魅力
金子裕子(映画ライター)

 トビー・マグワイアの魅力は、アンバランスな存在感であり、いびつな美しさだと思う。
 たとえば、顔立ち。大きく澄んだまなざしとすっきり通った鼻筋は一見、ハンサムな印象を与える。しかし、それに続く鼻頭は丸みを帯び、唇も少々厚く口の端が上がり過ぎだ。そう、この顔は、映しだされる角度によってファニーにも、息を飲むほど美しくも見える。単に美形の範疇には収まりきれない、不思議な味わいが。そして、その顔に時折浮かぶ微笑も常に陰りをおび、不敵とすら思うときがある。この笑いが要因なのか、存在感も複雑だ。純真無垢な若者でありながら、心の奥底では何を考えてるのかわからない不気味さが漂う。見た目は好青年なんだが、容易に胸うちには入り込ましてくれないし、また他人と交わることを好まない。いわば、外界と融合しているようで、じつはまったくハミ出している食えない奴といった印象なのだ。
 そんなトビーの一筋縄ではゆかない存在感を見抜き、最初にアピールしたのがアン・リー監督だ。『アイス・ストーム』で、性的に歪んだ長男を演じたトビーの放つ印象は強烈だった。そして、それを機に、ラッセ・ハルストレム監督の『サイダーハウス・ルール』では孤児院で純粋培養された青年を、カーティス・ハンソン監督の『ワンダー・ボーイズ』では大嘘つきにして才能豊かな作家の予備軍を好演した。いずれも、イノセンスとタフ(したたか)が同居した複雑なキャラクター。もし、トビーが演じていなければ、単なるスネ者か変人に終わっていたかもしれない。
 さて、これがアン・リー監督と2度目のコラボレーションとなる『楽園をください』だが、さすが“開拓者”だけにトビーのアンバランスな魅力を存分に魅せてくれた。ドイツ系移民の息子でありながら、南部男として盲信的な戦いに身を投じた若者ジェイク。15人も人を殺した猛者でありながら、女性に触れたこともない純情さ。そして、無秩序な殺戮のなかにあっても独自のモラルと人間性を保とうとあがき、自由を説く北軍を敵としながらも自由の必要性を痛感する。多くの矛盾をかかえて成長していく青年を、トビーは寡黙ながら圧倒的な存在感で演じ、ゆるやかに、しかし確実に共感を勝ち取っていく。2時間18分の全編、ほとんど出ずっぱりなのに、押しつけがましい演技はひとつもなく、それでも目を釘づけにさせっぱなしだなんて、なんという才能だろう。
 それにしても、撮影時の22歳という年齢も考え深い。演技力を見れば“若いのに凄い!”と思うし、顔を覆った無精ヒゲを剃って現れたツルンとした顔はをみれば“22歳にしてはかわいらしすぎる”だし。うーん、やっぱりトビーはアンバランスでビターな魅力。味わえば、味わうほど病みつきになる。





◆ジェイク・ロデル
Tobey Maguire
トビー・マグワイア

 1975年カリフォルニア州サンタ・モニカ生まれ。
 本名トビアス・ヴィンセント・マグワイア。コマーシャルやTVのゲスト出演を経て、92年にTVシリーズ“Great Scott”にレギュラー出演しヤング・アーティスト賞候補となる。
 93年にマイケル・ケイトン・ジョーンズ監督作『ボーイズ・ライフ』で、後に盟友となるレオナルド・ディカプリオと共演。ケイト・ネリガン共演のTVムーヴィ“Spoils of War”(94)、スティーヴン・ドーフ、リース・ウィザースプーン共演作『S.F.W.』(94)、アカデミー賞短編賞にノミネートされたキーファー・サザーランド共演作 “Duke of Groove” (95)などに助演した後に“Joyride” (96)で主演。
 続いて97年にはシガーニー・ウィーヴァー、ケヴィン・クライン、クリスティーナ・リッチ共演のアン・リー監督作『アイス・ストーム』に出演、崩壊した家族の中で性的問題を抱える青年役で高く評価された。以降は、ウディ・アレン監督作 『地球は女で回ってる』(97)で監督の分身役を好演、ジョニー・デップ、ベニチオ・デル・トロ共演のテリー・ギリアム監督作『ラスベガスをやっつけろ!』(98)に助演し、リース・ウィザースプーンと再共演したゲイリー・ロス監督作『カラー・オブ・ハート』(98)で若手主演俳優の座を確立。
 最近では、アカデミー賞2部門受賞で話題になったラッセ・ハルストレム監督作『サイダーハウス・ルール』(99)、マイケル・ダグラス共演のカーティス・ハンスン監督作『ワンダー・ボーイズ』(2000)などで堂々の主役を演じている。97年にレオナルド・ディカプリオが『タイタニック』のキャンペーンのために来日した際に、同伴して初来日を果たしている。
 公開待機作に裁判沙汰で話題となったディカプリオ共演作“Don's Plum”(2000/2001年公開予定)、最新作にスーザン・サランドン共演作“Like Cats & Dogs”、ハーヴィ・カイテル共演作“Jack Sheppard and Jonathan Wild”などが予定されており、アメリカン・コミックのヒーロー“スパイダーマン”を演じるという話題もあり、旬の若手スターとして活躍している。

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