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記者会見

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1997年2月20日/キャピトル東急
ウェス・クレイヴン(監督) マリアンヌ・マッダレーナ(製作総指揮)

◆初めに、日本の観客へのメッセージをお願いいたします。
ウェス・クレイヴン:以下W)これはプロデューサーのマリアンヌも同じ気持ちだと思いますが、多くの独創的な素晴らしい映画を生んだ、歴史ある日本に来ることができて光栄です。また時として本国アメリカで理解されなかった私の作品も、多くの日本のファンに受け入れた事もあってこうしてここに来れた事は本当に幸せです。 そして、個人的には今回、日本の色々な美しい場所を見る機会と多くの暖かい人々と出会えた事に、非常に感動していますし、本当に招いていただいてくれた事に感謝しております。
マリアンヌ・マッダレーナ:以下M)まず、私たちの作品「スクリーム」の為にお集りいただきありがとうございます。今回が私たちにとっての初来日なのですけれども、日本の方々の心からの歓迎に感動しております。また、日本の治安の良さ、人々の細やかな心遣いに大変感心しております。日本に来ることが出来て本当に良かったと思いますし、是非また来日出来ればと思っております。

◆何故、恐怖をテーマにした映画を撮られるのか、その動機を教えてください。
W)まず、私は自分の作品をホラー映画だとは思っていませんホラーというレッテルは他者がつけたもので、自分の作品は恐怖と恐怖を引き起こす人々についての話であり、それに人間が本来持つ純粋な心で対抗するといった事がテーマになっています。フレディや他の恐怖を司るキャラクターたちは人間が経験してきた恐怖を体現したものです。
私は観客を怖がらせるものを創りあげるのではなく、既に人々が心の中に持っている恐怖を描いています。観客が見終わった後、ネガティヴな気分になるのではなく、心の中の潜在的恐怖が引き出され、それに直面し解決していく。映画を観て勇気や希望を持つ事によって、過去の恐怖を克服出来る事を知ってもらいたいのです。
M)私たちが一緒につくってきた作品はポジティヴな作品だと思います。つまり恐怖や悪を描く事によって、それに対してどう対処していけばいいか、という事を描きたかったので、恐怖について多くの作品をつくって来たのです。

◆ご自身で脚本も書かれた場合と、そうでない場合の演出の違いはあると思いますか?
W)自分で脚本を書いた場合は、自分の潜在的な部分から自然に沸き上がった私的なものになりますが、他人による脚本の場合そういった個人的な感情を吹き込むのに大変苦労し、撮影中にも脚本に変更を加える場合もあります。しかし「スクリーム」の脚本の場合、初めから完璧な形に近く、ほとんど手直しをする必要はありませんでした。自分の個人的な感覚と非常に近いものを感じていたので、自分としては監督業にすべてのエネルギーを注入できたと言えます。脚本が自分の感覚とこれほど近いものに出会えるのはまれで、これは監督としては大変幸運であったと思います。

◆この作品が全米で大ヒットを記録している理由は何だと思いますか?
M)現在(1997年2月20日)、アメリカでの興収が8千万ドルを超え、これはいわゆる恐怖映画のジャンルでは最高になりますし、またミラマックスが配給した作品の中では「パルプ・フィクション」に次いで2位になります。この成功には大変驚き、喜んでおります。まず監督と脚本の出会いが非常に幸運だった事、またテレビ界での大スターや、現在多くの雑誌の表紙を飾っている注目株の若手俳優達が参加してくれた事、そして恐怖映画ファン以外の老若男女に娯楽作品として受け入れられ、口コミで広がったという現象が、これほどまでの成功をもたらしたと思います。
W)この作品はスリラーとして優れたものに仕上げられたと思います。これはホラー、サスペンス映画やメディアに多大な影響を受けた世代についてリアルに描かれた作品であり、そういった影響が現実にどのような反映しているかをドライに見せた所も観客の興味を引いたと思います。アメリカでの反応はまず純粋に怖がり、そしておもしろがって笑うという感じでした。過去のホラーやサスペンスに捧げたオマージュやパロディも口コミに大きく貢献したと思います。

◆プロデューサーにお聞きします。ウェス監督作品の魅力はどんなところですか?
M)それは大変難しい事ですね。「スクリーム」を例に具体的に言わせていただきますと、最初の15分間、ドリュー・バリモアのシークエンスですが、このスリリングな場面は今までなかった恐怖を産みだしたと思います。
また、登場人物についても細かいエピソードがうまく積み上げられていて、例えば警察官のデューイが警察所で妹にバカにされるシーンなどキャラクターの性格が巧みに語られていく部分も気に入っています。ラスト、犯行の計画がメチャクチャになって、状況が混沌としていく様も非常に効果的に撮られていると思います。と、挙げ始めるとキリがないのでこのくらいで(笑)。

◆観客の反応を見る時はどんな気持ちなのでしょうか?
W)私は作品を監督するプロセスにおいて、いつもある想像上の観客を一人想定しています、その人物は今までの私の作品について知っており、頭が良く、より良い作品を常に見たがっていて、飽きやすく、作品中の間違いをすぐに見つけます。作品作りはそんな人物との精神的なゲームであり、その想像上の観客を2時間近くのお話しに引き込む事だと思っています。そして、それは必ずしも簡単な事ではありません。酷い評を書かれたり、興行的に失敗し、二度と映画を作る事が出来なくなる可能性もありますし、逆に「スクリーム」のように成功を収めた時というのはとても力強い気持ちになることができます。
作品が成功するかどうか、という事が直感できるのはやはり一般試写の時でしょう。「スクリーム」の場合は一度だけ500人の観客に公開前に観てもらう機会がありましたが、こちらの思い通りの反応、怖がらせようとした所でビクッとしたり、ジョークを一つも見過ごす事なく大笑いし、上映後には皆満足していました。上映中の彼等の反応を見るのは自分の仕事が成功したかどうかを判断するのに非常に良い経験だですし、また観客とのつながりを強く感じる事が出来ます。自分よりも随分若い観客たちと殺人や死体について楽しく話し合うのは不思議な感じがしますが、恐怖映画とはそもそも、恐怖を一緒に体験する事によってある種の連帯感が生まれるものだと思います。ですから観客の反応を見るのは素晴しい経験だと思いますし、その時生まれた気持ちは長い間持続し自分の力になっていると思います。

◆今までご自身が経験した最も恐ろしかった体験は何でしょうか?
また、それは映画には反映されているのでしょうか?
W)もともと、恐怖映画というのは子供の頃のトラウマが主題になったりしますが、私の場合も幼い頃の両親の離婚とその1年後の父の死、その喪失感が大きかったと思います。家の経済状況は悲惨で、しょっちゅう引っ越しをしなくてはなりませんでした。その為、私はいつも夜、眠る時に不安で悪夢を見ていました。その時の記憶が私の作品に影を落としているのは確かです。
あとは大学時代に胸から下が麻痺してしまうという難病にかかり、死に蝕まれていく感触を感じました。恐らくこの二つの時期が私にとって最も恐怖を感じていた時期だと思います。

◆恐怖を描いた作品の中で個人的に優れていると思う作品を挙げてください。
W)恐怖映画にもいろいろな種類があり、その一つは単純な恐怖、異常な人物に襲われる事を描いたものです。「悪魔のいけにえ」がその究めつけだと思います。この作品は感情を排したリアルで生々しい演出で描かれています。観客にこの映画を撮った人間までもが精神異常なのではないだろうか、という作品を超えた恐怖を与えるのに成功していると思います。
人類より肉体的、感覚的に優れている生物の存在という、根源的な恐怖をうまく描いていたのが「エイリアン」だと思います。作品の中で、顔に張り付かれ体内に侵入されるなど生理的に耐え難い方法で人は殺されていきますが、実際に自然や生物は時として信じ難い恐怖となりえます。例えば現実的にはエイズ・ウィルスは世界中の科学者たちがまだ解決出来ないほどの洗練されたメカニズムを持っており、恐怖を与え続けています。
また、人間が正気を失っていく精神的な恐怖を描いた、ロマン・ポランスキーの「反撥」と「テナント 恐怖を借りた男」が、私が好きな、恐怖を描いた作品です。

◆この作品の持つ教訓というのは何なのでしょうか?
W)ネーヴ・キャンベル演じる主人公を例にとると、この世界では純真無垢なまま生きていく事はできない、という事が教訓になっていると思います。まず、自分の両親や世間に対する甘い幻想を捨て、世界に対峙することが大切だと言いたかったのです。自分の精神面を鍛え、他人に頼る生き方をやめなければ人生はつかめないということです。

◆犯人の動機についてお話しください。
W)脚本の初期段階では動機は一切存在しなかったそうです。現実の殺人事件の中でも特に衝撃を与えるのはまったく表面的な動機のない、突発的な猟奇殺人事件です。それは全く予知や防備する事が不可能だからです。最終稿では動機は与えられましたが、映画の中で描かれた動機だけが真の理由だったのかは、実ははっきりさせていません。犯人の心の中がわからない事が恐怖に結びつくと思ったからです。

◆現在は何か怖いものはありますか?
また過去の恐怖にまだ捕らわれていると思いますか?
W)私は幼い頃、母に宗教上の理由から映画を観る事を禁じられていました。しかし子供時代を第2次世界大戦の真っ只中に過ごした私は、ニュース映画だけは観ることが出来ました。そこで戦争フィルムを観ていた私は、敵国に対する憎しみなど、大人の世界の嫌な部分を感じながら育ちました。それが後年の私に影響を与えていると思います。その後、私はセラピーを受けたり、精神治療の本を読んだり、旅に出たり、ドラッグを経験するなど、様々な方法を試しながら、自分の中の多くの恐怖を克服してきました。
現在、私は現実的な恐怖を冷静に受け止める事が出来るようになりましたが、無知からくる未知への恐怖は今後も色々経験し、無くしていきたいと思います。新しい世代は恐怖映画などを通してこれから起る恐怖を疑似体験しており、それらの対処方法を学んで強くなっているとも言えると思います。

◆映画作家の中には、大きな成功を掴むと自分のやりたいと思っていたプロジェクトに着手するというケースも多いと思いますが、あなたの場合はどうなのでしょう?
W)本作の成功によって私たちはミラマックスと2作品の契約を結ぶ事が出来ました。1つはサスペンス・スリラーです。もう1作品はドラマで、これはドキュメンタリーにもなった実話をもとにした“FIDDLE FEST”という作品になりそうです。内容は夫に捨てられ神経衰弱になってしまった女性が、スラムの子供達にバイオリンを教える事によって自分と子供達を救っていくという話です。バイオレンスは一切なしでバイオリンだけです(笑)。(注:この作品は、『ミュージック・オブ・ハート)』のことです)また、アメリカの大手出版社から初の小説を出す事が決定しました。これはサスペンスになる予定です。
このように本作の成功のおかげで今まで棚上げになっていたプロジェクトを軌道に乗せる事が出来る様になって、現在は幸せな状況です。

◆現在、具体的な悪夢は見るのでしょうか?
それとも子供時代の恐怖を払拭した事によって、もう悩ませられる事はなくなったのでしょうか?
W)記者会見の悪夢を見ます(笑)。というのは冗談で、最近見た悪夢は兄が苦しんでいるというものでした。というのも現実に私の兄は癌で闘病生活を送っているのです。悪夢は今でも見る事もありますがそ、れらは現実的な恐怖や不安に基づいたものです。悪夢の原因がはっきりわかっている今の方が対処しやすいですね。また、一時、夢についての記録を取っていた事もあるため、夢には今でも敏感です。

◆悪夢を見る事が快感になったりした事はありませんか?
W)いえ、そんな事はありません。夢をある程度コントロールする事が出来るようになったので、おもしろいとは思いますが。今は健康的に夢を見る事が出来るようになりましたね。
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