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Interview
カンヌ国際映画祭共同記者会見
1997.5.16
採録/翻訳:今井孝子
ニック・カサヴェテス(NC)/ショーン・ペン(SP)/ロビン・ライト・ペン(RW)/ジョン・トラヴォルタ(JT)
この作品の脚本が書かれ、映画化された経緯を教えてください。
NC 「父親のジョン(カサヴェテス)が確か70年代に脚本を書いたんです。父はずっとこの作品を映画化したいと思っていたんです。父はある時期多くの脚本を書き上げていましたが、僕がこの作品のことを初めて知ったのは僕たちの家にショーンが訪ねてくるようになってからでした。父は彼を主演にして映画化しようと計画していたんです。ショーンにとってこの作品はとても意味が深いわけです、長年興味を抱いていた作品ですからね。ショーンが監督したらどうかという話がでたこともあるんですよ。それから彼自身が脚本を書いて監督するという作品が2作品あって、彼がこの作品を監督するという企画が流れてしまったんです。そしてこの話しはひょんなことで、僕のところにきたんです。ショーンのこの映画に対する情熱もまだ冷めていなかったし、僕が監督するのはいいアイデアだって言ってくれて。何年も前に書かれた脚本ということで、少し書き換えて現代にマッチするようにした部分はあります。それもほんの少しの部分ですから、ほぼオリジナルのまま映画化したことになりますが」
ジョン・カサヴェテスの脚本も他の名作と同様、台詞を書き換えたりということはできないんじゃないんですか?
NC 「ここで告白しなければならないことがあります。父は時々僕が理解できないようなことを書くことがありました。おそらく他の人達も理解できないことだとは思うのですが、本人にはよくわかっているということなんです。監督の仕事というのは脚本をよく理解して、俳優から質問された時に知的に答えるというものだと思います。だからこの作品に関してもほんのちょっとだけ、書き換えましたが、それはどの監督もすることですしね」
ジョン・トラヴォルタを起用した理由は?
NC 「ジョン・トラヴォルタの役は脚本の中で書かれていた通りです。ジョンの演技はあの役をよく表現してくれていたと思います」
JT 「この役は予想する必要もありませんでしたね。まさにカサヴェテスの典型的な役柄だったからです。特に僕とロビンの役はそういうタイプの役だったと思います。ショーンの役にしてもそういう所がありましたからね。だからこの役を引き受けるのに問題はありませんでした。この役は“Husbands”の中に出てくる男達を彷彿とさせましたね。ロビンの役はジーナ(ローランズ)の役にちょっと似ていましたしね。きっとみなさんも共通点を見出せると思いますよ。だから、第3幕まで僕の役は存在感がないなんてこと、全く気にもかけませんでした」
でもこの役の人物がそれまでどんな人生を送ってきたかなんてことを自分で描いてみたりしましたか?
JT 「この男の素性を探ろうとするのはむずかしくないですよね。やばいことをやってた感じっていうのはあるし、彼の住んでいる家やコネティカットの雰囲気がそのへんのところを多く物語っていると思います」
ジョン・カサヴェテス監督が生きている時からこの作品に関わっていらして、また彼のご子息と一緒にお仕事することになった感想はどうですか?
SP 「過去のプロジェクトがまた蘇って、新しい世代にバトンタッチされることはとてもすばらしいと思いましたね。特にニックはとても個性的ですから。ニックと一緒にこのプロジェクトを進めていくことになって、(父と息子という)二人の関係がロマンティックに思えました。ニックって本当におかしな奴でね。ジョンとは脚本をよく読み込んだ後、僕がどの役をやるかということまでは話し合いましたが、演出の部分にまではそれほど触れなかったので、新鮮な感覚でスタートすることができました。ニックがジョンの息子であるということにも僕はひかれましたが、彼のなかにはジョンだけでなく、みんなのアイデアが反映されていたと思いますね。今日の彼は本領発揮してないみたいですけど…」
脚本は作っていくうちに、滑稽で軽い感じのものになっていったんですか?
NC 「その部分はわかりませんね。映画を作っているとそういう分析をするのが難しくなりますからね。ショーンとロビンと僕とで作っていると、こんなに才能あふれる人達と一緒なんだから、計画通りにがっちり作っていくなんてことができなくなっていくんですよ。すばらしい才能があるのにそれを無視してしまうなんてばかげているじゃないですか。それが僕が映画を作る上でずっと貫いている哲学ですね。どのシーンで一体俳優達のダイナミクスが生まれてくるかなんてことは、監督にだってわからないことなんですからね。その部分がわかってきたら、後はいろいろな選択ができるようになるんですよ。でないと、せっかく俳優のなかに即興的に美しい物が生まれても、そこが活かしきれなくなるのです」
でも最後のエンディングが腑に落ちないという見方もありますが、あなたはどのように自分の役を演じましたか?
RW 「今日はかなり似たような質問をされたわ。愛というのは決して死滅しないものだと思います。心の中に残る映画の台詞は、カルチャーな部分で育っていくんじゃないかしら。だから精神性というのは決して人間の中から消えないものだってことを念頭に置いて演じてみました」
NC 「僕は皆さんの人生を豊かに送るお手伝いをしたいと思うんです。3歳の娘と新生児を抱えた若い夫婦の話をさせてください。産院から赤ん坊を連れて家に戻ってきた夫婦に向かって3歳の娘が『ママ、パパあたちにも赤ちゃん見せて』と言ったんですが、この夫婦は娘が赤ん坊にやきもちを焼くのを恐れてダメだといったんです。3日間泣き続ける娘を見るに見かねて二人は娘を赤ん坊のいる部屋にいかせ、自分達はインターコムで部屋の様子をうかがっていました。その娘は赤ん坊に向かってこういったんです。『ねえ、神さまのことを教えて。あたち、すっかり忘れてしまったから』ってね」
JT 「僕の答えはもっとシンプルです。ジョン・カサヴェテスの脚本っていうのはとても抽象的で、予想もつかないような方向性に向かっていくんです。だから演じ方もそうなってきます。たとえば何年も前に僕は『ミッドナイト・クロス』という映画に出たんですが、ついにはナンシー・オーウェンを殺さなくてはならなくなった。しかし僕らにはナンシーを殺さないというオプションもあった。名作映画なら普通そんなことはありえないわけだけど、ジョン・カサヴェテスやフェリーニ、それに時にしてベルイマンのような監督の映画の中にはありえるんです。だから、映画ってすばらしいってことになるんですよね」
なぜこんなにも長い間この役をやりたいと思い続けていたんでしようか。
SP 「この役にはすごくひかれるものがあってね。すばらしい描かれ方がされていたんですよ。ジョン・カサヴェテスはすばらしい脚本家だと思いますね。よくいろんなキャラクターを演じてさまざまなレベルで演技に挑戦するという俳優がいますけど、僕はいつもその言葉に困惑してしまうんです。純粋だろうとなかろうと僕達人間はいろんな面があると思うからです。特にこの役が気に入ったところは一人の女をずっと愛し続けているというところです。ここは俳優ではなく、脚本のすばらしさですね。そしてニックのなせる技ですが、どんな監督でもそうした脚本の恩恵を受けることができるかもしれませんね」
『パルプ・フィクション』に次いでカンヌ50周年記念に参加できた感想は?
JT 「カンヌ映画祭は僕のキャリアを4〜5回蘇らせてくれました。タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』がカンヌで賞をとり、注目されなかったら、今僕はここに来ていなかったと思いますね。今回の役はまず脚本を読むことから入りました。もちろん、僕はカサヴェテスのファンですから、喜んで読みましたが、この脚本は彼の初期の頃の作品とはちょっと違っていて、構成がしっかりしていてとても魅力を感じましたね。この作品というのは1部、2部、3部に分かれていてジョンのいつもの脚本と違うんですよね。そこがひねってあって、しかもカサヴェテス流のエキセントリックさとか風変わりな部分が入っていて僕はとてもひかれてしまいましたね。ショーンとロビンが演じたキャラクターにもひかれたし、自分のキャラクターには彼の初期の頃の作品の匂いがするなと思いました。だからとても満足感があったんでしようね。それにショーンから僕とロビンに是非とも共演して欲しいって電話がはいったんです。君達なしにはとても生きていけないってね。この言葉に僕は一発でまいってしまったんだ」
悲劇的な場面でも音楽でユーモアを盛り上げていましたね。
NC 「僕はこの映画を悲劇だとは思いませんけどね。タフな部分はありますけど、いつの時にも愛は美しいし、どんなに悲劇が起ころうと人生はやっぱり美しいものなんです。音楽はそこを表現しています」
奥さんと共演するのってどんな気分ですか?また共演したいと思いますか?
SP 「ボクは披女のことをいつもこの惑星の中で一番すばらしくて美しい女優だと思っていましたからね。彼女のような人が演じているのを見ることは俳優としてとてもエキサイティングなことですよね。彼女とはまた共演したいと思っています」
あなたが演じたジョーイという男は一見ノーマルに見えますが、エディと同じくらいクレイジーな奴ですよね。
JT 「僕が分析するにはロビンの役はある種のタイプの男に惹かれる女なんですよ。ここはジョン・カサヴェテス自身が作りだした部分ですけど。とにかくある人間に恋をして、そいつがいなくなったら、またそいつによく似た奴に恋してしまう女として描かれているんですよ。新しく恋した男は前の男とよく似ているけれども、もっと中流階級出身の奴で…。この辺がおかしくて、とてもひかれてしまったんです。初対面の時はエディという男はとても常識的でいい人間そうに見えるのですが、あっという間に嫌な奴にかわってしまう」
最初ロビンの髪の毛の色がブロンドでショーンの髪の毛の色が茶色ですが、再会する時は変わっていますよね。これは脚本の中に描かれていたことなのですか。
RW 「まるで美容院が廃業になったように見えたかしら。2時間の映画の中で見るといきなり変わってしまったかのように見えるけれど、そこには10年の月日が流れているんですよ。ショーンはヘアースタイルが変って素敵だったでしょ」
それでは3人のみなさんにそれぞれ演じたキャラクターについて定義してもらいましょうか?
RW 「私が演じた女性ができる限りみすぼらしいほうがいいというのはニックのアイデアだと思うわ。脚本の中には私の役は最初から殴られるように書かれていたんだけど、その場面をすさまじいものにしようとしても限度があるんで、テスト撮影はしてみたんです。2時間の映画でその部分があまり露骨に描かれていると、制限を受けてしまうので、少し抑えぎみにしてあるんですよ」
NC 「ロビンは気付いていないかもしれないけど、彼女ってすごくおかしなひとなんです。彼女には天性のコミックな要素が肉体の中に備わっているんです。衣装合わせの時、冗談めかしに『こういうウォークアウトしてみようかしら』って言うんで、僕は、うんその線でいってみようっていっちゃいましたよ」
RW 「私の役って、おしりがスカートの中に収まっているというよりは空中に浮いているって感じの女性よね」
SP 「最初から最後まで僕の役はハンサムな男だとずっと僕は思っていましたね。それに現実っぽく演じたつもりです。初めて脚本を読んだ時、登場人物の着ている服になぜかみせられちゃってね。動作について言えば、滑稽な感じをだしてみました」
JT 「僕の役はジョン・カサヴェテス、ピーター・フォーク、ベン・ギャザラといった人達に御馴染みの人物で、スーツやシャツをめかしこんで着ていて、たばこも酒もやるって男ですから、いたってシンプルでした」
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