アスミック・エース映画情報シーズ・ソー・ラヴリー
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Introduction
Lovely09.JPG 『シーズ・ソー・ラヴリー』はキレたカップル、エディとモーリーンの純愛を描いたラヴ・ストーリーである。脚本はアメリカのインディペンデント映画の父である伝説の名監督、故ジョン・カサヴェテスが20年前に書き下ろしたもの。監督はジョンの実子であるニック・カサヴェテスで、ジョンの妻にしてニックの母でもあるジーナ・ローランズも出演している。主演はジョンの生前からこの脚本の映画化を熱望してやまず、彼の死後に一時は映画化権を継承したショーン・ペン。相手役に彼の実際の妻であるロビン・ライト・ペン。そして、主演の一人であるジョン・トラヴォルタや、フランス映画界のスーパースターであるジェラール・ドパルデュー、アメリカのインディペンデントの雄ミラマックスが映画化実現のために製作に参画している。不思議な縁で結ばれた才能たちが、熱い思いの下に集って創り上げた本作は1997年第50回カンヌ国際映画祭に正式出品され、ショーン・ペンは見事に主演男優賞に輝いた。観客も観賞後の余韻を胸に温かく拍手を送り続けた。

Lovely04.JPG エディとモーリーンは若く無軌道なカップルだが、深く愛し合っていた。ある日、モーリーンは3日も帰ってこないエディを探しに酒場に行く。エディはおらず、モーリーンは同じアパートに住む隣人キーファーと酒を飲みだす。やがてモーリーンはキーファーに暴行されてしまう。翌日帰ってきたエディは腫れ上がったモーリーンの顔を見て心配する。翌朝、キーファーの暴行を察して激昂したエディは銃を手に彼を探し回るが、とり押さえられ精神病院に収容されてしまう。それから10年が経過して、モーリーンは新しい夫ジョーイと3人の娘と幸せに暮らしていた。長女はエディとの間に生まれた娘である。そんな時、退院してきたエディがモーリーンに変らぬ愛を訴える。エディとジョーイ、二人の愛の板挟みに悩むモーリーンは果たして、何を選択するのだろうか?

Lovely16.JPG 他人から見れば何をするかわからず、日々の生活、将来設計など窺い知る由もないエディとモーリーン。それは二人が世間一般の常識や見栄にとらわれず、他人の眼など構いもせず、愛を起点に行動しているからである。深く心から愛しあっている二人はお互いのためなら何物をも犠牲にする純粋さを持っている。ところが、エディの精神が異常をきたし病院に収容されてしまい10年間離れて暮らす間に、モーリーンはジョーイと暮らしを共にする事となる。ジョーイもまたモーリーンを熱愛し、彼女もエディを愛しながらジョーイをも愛している。そして、それぞれが一堂に介し、決断に迫られる3人。その愛情の直截さは観客を驚かす。この映画には、そうした周囲や一般からは理解されない、不格好だが深く純粋な愛のかたちが描かれていく。

Lovely11-2.JPG その過激さゆえに、時に笑いさえも誘う愛を描くのはジョン・カサヴェテスの独壇場だろう。『こわれゆく女』、『オープニング・ナイト』、『ラヴ・ストリームス』など数々の傑作を生み出したジョンだが、本作にも彼が創り続けてきた映画の流れが脈々と息づいている。前半は暗い前途を象徴するかのようなそぼ降る雨がスクリーンを覆い、後半は晴れ上がった空の下でドラマが展開していく。決して到達点にいたらず、成形されない愛。そしてラストの潔さ。この世でお互いのみを必要としているカップルの至上の愛を通してジョン・カサヴェテスは何を訴えたかったのだろうか?

 この脚本はジョンの生前からショーン・ペンと映画化を企画してきたものだが、実現せず結局ジョンの実子ニック・カサヴェテスによって誕生した。奇妙な縁で出来上がった本作はジョンが作った骨格に、ニックが魂を入れ、気合の入った役者たちが産み出している。ジョン本来の厳しい現実を優しく見つめる視点に、よりニックの爽やかな優しさが味付けされた仕上りは、日が経つに連れじわじわと重さが増してくる不思議な観賞後感。エキセントリックな登場人物の誰にも感情移入出来ないのに、妙に物寂しく、懐かしく、愛しく、いつのまにか心の一隅を占められてしまうそんな映画だ。

 監督のニック・カサヴェテスは、俳優として活躍してきたが『ミルドレッド』で監督デビュー、本作が2作目の監督作品となる。脚本はジョン・カサヴェテスが20年前に書いている。出演は『デッドマン・ウォーキング』でベルリン映画祭銀熊(主演男優)賞を受賞、本作でカンヌ映画祭主演男優賞を獲得し、アメリカ映画界を代表する演技派スターに成長したショーン・ペン。10年以上前から本作の実現を願ってきた彼だけに、危なさと繊細さを紙一重で併せ持つエディを見事に演じきっている。妻モーリーンを演じるのはショーンの実際の妻でもあるロビン・ライト・ペン。映画の要となる10年の時間の経過を説得力をもって表現し本作の奥行きを構築している。そして、モーリーンの夫ジョーイを演ずるのは『パルプ・フィクション』で復活したスーパースター、ジョン・トラヴォルタ。後半部のみの登場だが映画の幕を引く重要な役を二人に対向する圧倒的な存在感で演じている。エディの友人役で『パリ、テキサス』の名脇役ハリー・ディーン・スタントン、『イン・ザ・スープ』のデビ・メイザーが映画の空気を創出。隣人キーファー役に『ゲット・ショーティ』でトラヴォルタと共演したジェイムズ・ギャンドルフィニが嫌らしい味を、ミス・グリーン役でジーナ・ローランズが貫録を見せているほか、『ロッキー』シリーズのバート・ヤングとタリア・シャイアが特別出演している。プロデューサーにはルネ・クレイマン、製作総指揮にはジョン・トラヴォルタ、ジェラール・ドパルデュー、ショーン・ペン、ベルナール・ブイ。

撮影は『フィフス・エレメント』と本作でカンヌ映画祭高等技術院賞を受賞したリュック・ベッソン組のティエリー・アルボガスト。プロダクション・デザインは『レザボア・ドッグス』などタランティーノ組として知られるデイヴィッド・ワスコ。編集は『ミルドレッド』のペトラ・フォン・オールフェンが担当している。
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