世紀末に放つ、血と風土と和的恐怖の新機軸。
神社の暗がりや、旧家の湿った空気の匂い、なぜだか近寄ると心が震える不可思議な場所・・・・。恐怖の中には、わたしたち日本人の血が思わずゾクッと反応してしまうような種類のものが確かに存在する。お遍路信仰が今なお根付いている四国の中、古来、鬼=死者の住む所と言われた土佐のある村を舞台に繰り広げられる、生者と死者の禍々しく狂おしい怪奇ロマン。日本の因習に根ざした恐怖を描かせたら右に出るものがいない、坂東眞砂子原作の、土地と血にまつわる恐怖の世界は、わたしたちの根源的恐怖心理を、じっくりと攻め上げてくる。
四国は死国なのか!? 古代伝承をベースに四国、高知に展開する怪奇物語。
黄泉津大神が治める黄泉津国(ヨモツクニ)とは、黄泉の国=死者の住む国を意味する。ヨモツクニは四方つ国(ヨモツクニ)。この最初の文字と最後の文字を組みあわせれば、それは四国、となる。その「結界」の中心地である土佐の矢狗村にて、代々巫女の家系である日浦家の跡取り娘の莎代里が十六歳という若さで不慮の死を遂げたことから、四国はその真の正体を現わし始める。死者の国の封印が解き放たれる時が来たのだ。
お遍路を逆回りに回ると、死者がよみがえる。
弘法大師ゆかりの八十八ヶ所の寺を白装束姿でめぐり、お札を集める事で願い事が成就するという、お遍路という民間信仰は、今も四国に根強く残っているが、それはその地に「結界」を張る行為なのだという説がある。愛娘をつぼみの時分に失った母、照子は嘆きのあまり、逆回りの遍路行、逆打ち(さかうち)という、死者をこの世に再び呼び寄せるための、危険な行為に熱中するのであった。そして、それが死んだ娘の年齢と同じ、十六回を数えたとき、恐怖が現実化する。
「生きて、恋を成就させたかった」 少女の無念は、凶々しい怨念に変わっていった。
幼いころの仲良しで、ともに文也という少年に淡い恋心を憶えていた、不思議な魅力の少女・莎代里。田舎の持ち家を処分しに十五年ぶりに故郷にやって来た比奈子は、彼女が高校生の時、不慮の事故で亡くなったことを聞き、驚く。文也への強烈な恋情を持ちつつ死んでいった少女の無念がこの世によみがえったとき、それは世にも恐ろしい「かたち」となって、比奈子を、そして、人々を恐怖のどん底にたたき込んでいくのだった。
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