「心のスイッチをオフにして、ただ音楽についていったらどこまででも行けるのさ!」
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佐藤友紀(フリーライター)
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「大好きなニールの音楽が、どこからやって来るのか、さぐってみたいと思ったんだ」
ジム・ジャームッシュがこう言った時、なぜ自分がこれほどにも『イヤー・オブ・ザ・ホース』に魅かれてしまったのかがわかったような気がした。
昨年のヴェネツィア映画祭。“音楽に寄せる部門”というカテゴリーへの作品なのに、映写効果も、ましてや音響効果も最悪の、ふだんは記者会見に使われている会場での上映。にもかかわらずオープニングからニール・ヤングとクレイジー・ホースの音楽の世界とジャームッシュの映像詩が無理なく融合し、こちらをジム言うところの“探求の旅”に誘う。前かがみの姿勢で歌い演奏するニールと雲が、大空でセッションする辺りでは、もうすっかり旅の一員になってしまい、この種の映画では時々ありがちな、「最初からニール・ヤングの音楽ファンではなかった自分」に対するコンプレックスも、どこかに吹っ飛んでいく。
コンサート・ツアーを追った臨場感というものを第一義にとらえたら、同時録音という手法をとったはずのジャームッシュ。それをわざわざ別録りにしたのは、「音楽をもちゃんと聞かせたかった」のと、私自身、思わず涙があふれてしまったラストの“ライク・ア・ハリケーン”の映像のため、と言っていいだろう。それまでにも、現在の彼ら、20年前の彼らの映像が登場し、その都度、「ワーオ!」といった声があがった。それが、一つの同じ曲の演奏の中で、何の落差も障害もなく、映像的にはポーンと20年の時空を超えてしまう凄さ。もちろん、本物の20年間という時の流れの中では、いろいろな逡巡や葛藤やトラブルもあったはずなのに、今なおかつてと同じように、姿形だけはだいぶ老けてしまったけど、同じスタイル、同じ心意気で演奏している彼らに感動してしまうのだ。いや、「同じ」というのは間違いかもしれない。ますますピュアに、ますます良くなっている音楽と、どう見てもおじさんロッカーの外見が、ここではちゃんとはまっていることへの共感と言おうか。
余計なものをどんどんそぎ落として、透明に透明にとなっていく旅。まだまだ止まらないバスに乗り合わせてしまった幸運を、いったい誰に感謝したらいいのだろう!?
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| <魂をも揺さぶる映像と音の競演> |
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『ストレンジャー・ザン・パラダイス』など数々の名作を撮り続け、熱狂的な支持を得ているジム・ジャームッシュ。30年以上ずっと現役として活躍し、絶えず様々な方向性にチャレンジし続けているアメリカン・ロック界の大御所ニール・ヤング。昔からヤングの大ファンであったジャームッシュは前作『デッドマン』で彼に音楽を依頼、二人はかつてない詩的な映像世界をつくりあげた。そして本作『イヤー・オブ・ザ・ホース』では、魂をも揺さぶる映像と音の“究極の競演”を遂に実現させた。不屈の精神を持つミュージシャンの怒涛の演奏と、現代を代表する映像作家による叙情性溢れる映像が絡み合うことによって、心から湧き出る心地よさが生み出され、優しさに包まれたような忘れ得ぬ感動を与えてくれる。
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| <時空を超えたロードムーヴィー ジム・ジャームッシュ監督最新作> |
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本作は、ニール・ヤングおよび、彼と熱い絆で結ばれた“暴れ馬”クレイジー・ホースの30年間にも渡る軌跡を綴った感動と興奮の旅路の記録である。どこまでも雲が続く雄大な空、ツアー・バスから捉えた荒野の風景、ヤングの父親へのインタビュー、初代メンバーの死についての証言。数々のショットが積みかさねられていくが、8ミリ・フィルムを多用した粒子の荒い画面には新鮮さと生命力が満ち溢れ、その自由で開放的な映像は詩情的なジャームッシュの世界を存分に堪能させてくれる。
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| <ロックを体現しつづけるアーティスト ニール・ヤング> |
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70年代を生き抜き、現在もロックを体現するアーティスト、ニール・ヤング。音楽的才能はもちろんのこと、ビジネスやトレンドに左右されず、チャリティ活動を精力的に行うなど、その我が道を行くスタンスは多くのファンを魅了し続けている。若手アーティストたちにも多大な影響を与え、自殺したニルヴァーナのカート・コバーンの遺書にも彼の曲の歌詞が引用されていたほど。ジャームッシュの敬愛に満ちた視線が、ヤングの人間味溢れる魅力を最大限に引き出し、初めて彼の曲を聴いた人ですら、観終わったあと思わず曲をくちずさみたくなるだろう。
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